再構築すべき防共回廊(関岡英之氏の遺言)
防共回廊より明らかになった、知られざる日本と東トルキスタンの外交関係
安倍政権が推し進めている「自由で開かれたインド太平洋構想」と並んでもう一つ、再構築すべきと考える日本の世界戦略がある。それは、「防共回廊」と呼ばれる構想であり、かつて旧日本帝国陸軍が極秘で推進していた地政学的世界戦略である。満洲、モンゴル、ウイグルの独立運動を支援することで「反共・親日国家群」をユーラシア大陸に「回廊」のごとく樹立し、ソ連共産主義勢力の南下を防いで中国共産党との連携を遮断、東アジアの赤化を阻止するという壮大な計画があった。この防共回廊構想に関わった林銑十郎大将(元首相)、板垣征四郎大将らの軍人や、歴史に埋もれた外交官、諜報員、現地関係者などの事跡を発掘し『帝国陸軍 知られざる地政学戦略 見果てぬ「防共回廊」』という著者にまとめた関岡英之氏(2019/05死亡)の偉業を紹介しておきたい。
戦後、タブーとして闇に封印されていた歴史であったが、関岡氏が外務省の機密公電をはじめ、新資料を丹念に調べ上げて防共回廊構想の全容を解明している。著書あとがきに「三部作を世に出すことが出来て、もう思い残す事はない」とまで記しているが、本書が関岡氏の遺言となってしまったことは悲しい。自分の足で確かめて取材を重ねる姿勢は感銘するところであり、少し仕事は異なっていたがほぼ同じ時に中国やインドの内情を見聞した同世代の日本人として関岡氏の偉業を受け継ぎたい。
私が安倍政権を支持した理由は、2012年に発表された民主的セキュリティダイヤモンド(後に、自由で開かれたインド太平洋)構想を軸に展開していく外交の戦略性・先進性に期待したからである。中国が推し進めている一帯一路構想に対抗して、自由で民主的な米国、オーストラリア、インド、日本がダイヤモンドの形で連携して安全保障体制を整え、インド太平洋地域・経済を牽引していくという考えである。
安倍首相も関岡氏の著作を読まれて共感したと聞いているので、自由で開かれたインド太平洋構想と併せて、防共回廊を再構築して推進して欲しい。