COVID-19リスクの人口密度依存性分析
日本でも医療従事者に続き高齢者へのワクチン接種が始まっている。そこで今一度ワクチンを接種する意味をよく考えるために、最新の統計データを整理してみた。最初に新型コロナウィルス死者数の都道府県別の数字を比較している。都道府県の都市人口密度を横軸に取ることにより、COVID-19が原因の死者数が人口密度の大小にどれだけ依存するかを知ることができる。縦軸は人口百万人当たり(2021/04/21までの)累積死者数である。都道府県別で死者数が多い順に北海道、大阪府、東京都、兵庫県の順番となっている。同じ縦軸に、厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会が公表している、2021/02/17~2021/04/04に新型コロナワクチン接種に関連しての死亡者数(人口百万人あたり6.6件)のレベルをピンクの帯で示した。因果関係は明確にされていないが、日本において医療従事者を中心に行なってきているワクチン接種により60歳以上の方5人と20代の方1人が接種後に死亡している。
時間軸に差があるので単純には比較できないが、これまで死者が発生していない島根県、百万人当たり累積死者数が3.6である鳥取県のような地域では、新型コロナワクチン接種で死亡する確率が感染で死亡する確率を上回っている。日本での新型コロナワクチン接種は今のところ医療従事者が中心で基礎疾患などのない健康な方に実施されてきているが、既に先行して一般市民への接種が進んでいる米国では百万人接種当たり18件、英国では26.2件の関連死亡数が報告されている。
日本でも高齢者を含む一般市民へのワクチン接種が進んでいるが、(ピンク色ラインが高くなり、10以上の都道府県の累積死亡者数を超えることが予測されるため)日本の人口密度の低い多くの地域においては、新型コロナウィルス感染よりも、ワクチン接種に関係した重症化や死亡の危険性が高くなる可能性がある。
新型コロナ感染の人口密度依存性をさらに分析してみると、都道府県ごとの累計陽性者数に対しても、都道府県ごとの累計死亡者数に対しても正の相関があった(相関係数は累計陽性者数では0.6811、累計死亡者数では0.4128)。しかし、どちらも相関係数が1.0に近づく強い相関ではない。特に累計死亡者数は人口密度が低い北海道や岐阜県など都市と距離を隔てた都道府県で百万人当たり100人になっており、東京都、大阪府と同レベルの百万人当たり累計死亡者数となっている。
累積死亡者数を累積陽性者数で割った死亡率について都道府県ごとに比較すると、岩手県、福島県、福井県の方が東京都、大阪府よりも高い率となっており、人口密度が低い地域が一概に死亡率も低いとはいえない。
これまで感染者数は人口密度に比例することが多数報告されている。実測されてきたデータおよびそれらの分析結果は、感染者数が人口密度に比例(平均対人距離の2乗に反比例)するという原理と符合している。
これに対して、地域別の死亡者数や死亡率は明らかに上記原理とは異なる特性を示している。COVID-19に伴なう死亡を特性付けている要因としては、地域ごとのライフスタイル、医療施設の利用環境などが関係していると考えられる。特に医療崩壊がCOVID-19感染による死亡率を上昇させてしまうことは、既に1年前に整理した情報からも明らかである(緊急事態宣言と私たちの責任、「効果・効用の周知・説明の不足が感染爆発を招く」参照)。