中国不動産バブルの崩壊

摩天楼の乱立が象徴する中国不動産投資

中国では土地は所有できないので、中国の不動産はマンションあるいは豪邸などの建物(うわモノ)と土地の利用権である。その不動産の価値を上げるために、中国では臨海部の大都市でも内陸部でも摩天楼が樹立されてきた。2012年に既に中国の不動産建設が実需を反映しておらず、不動産バブルに対する警鐘が鳴らされていた。その時点で世界有数の超高層ビルの87%が中国にあったと報道されている。

もう三十年前(1990年ごろ)に中国の改革開放の様子を調査に行った際、広州市(私の生まれた街並みと似ていた)から香港に向かう手前で電車を降りた時、深センで新宿副都心よりも高く、そして大規模に乱立する高層ビルを見上げて驚嘆した。その後数年の間にも何回か中国の主要都市を巡ったが、上海や北京だけでなく地方の主要都市にも同じように摩天楼が樹立していったのを見たときに、個人的に少し違和感を覚えた。その後二十年くらい過ぎて2012年の夏ごろ報道されていた新唐人テレビのニュースが、その時の私の感覚と共振したので、備忘録に留めておいた(消失することを想定して切り取ってYoutubeに保管しておいたが8年経っても原典をまだ辿れるので、このメディアは結構信頼に足る)。

その後は毎年のように、中国がどうなっていくか観察して綴ってきた(個人ブログのマネーマーケットのカテゴリの大半を埋めているのがその記事であるが、詳しくは2020年初めに記した「中国経済2020:updated」参照)。

中国住宅ビッグデータ分析報告書(2020)

「中国経済2020:updated」の中で、2019年後半から2020年に向けて中国経済は不動産取引を起点にバブル崩壊に向かっていることを記したが、2020/12/01に中国社会科学院金融戦略研究所の住宅ビッグデータプロジェクトチームが出した「中国住宅ビッグデータ分析報告書(2020)」でその証拠が確認できた。

中国の政府系機関が「中国の住宅価格は下落しなかった時代は終わり、現在、中国の不動産市場の浮き沈みは差別化を始めており、9都市のすべてで住宅価格は15%以上下落している」と公言しており、中国不動産バブルを認めたところに重大な意味がある。

日本では1990/03/27に、当時の大蔵省から金融機関に対して「不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑える」という総量規制と呼ばれる行政指導が行なわれ、約1年9ヶ月続けたことで不動産価格の下落が始まった。この価格下落が日本経済の金融バブル崩壊に繋がるが、日銀が慌てて総量規制を1991/12に解除しても流れを止めることはできなかった。

中国でも政策当局が経済を不安化し得る資産バブルを防ごうと不動産会社に対する資金調達規制が2017/04に始まり、新型コロナウイルス感染拡大後に一時的に緩和されたものの、再び強化されている。やはり中国においても始まった不動産価格の下落は後戻しできないことになるだろう。

中国、社債不履行が多発 警戒強める金融当局

不動産価格の下落だけでなく、中国での大型経営破綻は後を絶たない状態になっている。いずれも国を代表する(日本ではトヨタ・日産・日立クラスの)大企業の債務不履行・破綻である。BMWの中国でのパートナであった華晨汽車集団が2020/11/20に破産手続きに入った。清華大学をバックボーンとして中国で最先端の半導体製造を⼿がける紫光集団は2020/11/16、社債13億元を償還できない債務不履行に陥った。

中国は銀⾏の不良債権とその予備軍が計6兆7千億元近くまで増えたと公表している(その額は円換算では100兆円超、先進国の基準で査定すれば潜在的な不良債権はこの何倍もある)。中国はいままさに⽇本が1990年に直面したのと同じ問題に直⾯しており、その学習能力の高さが試されている。

中国経済2020:updated

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