無償検査を利用者主導に戻そう
ワクチン・検査パッケージという施策を国が本格的に推進してきています。自民政権はワクチンパスポートを経済回復のための必須政策として既定路線にしています。
ところで代表的な「ワクチン・検査パッケージ」の技術実証(資料3 ワクチン・検査パッケージに関する技術実証の中間報告参照)を見る限りの中間評価ですが、多くの技術実証では未接種者が検査を受ける機会はほぼ提供されておらず、あからさまな未接種者差別になってしまっていますので、これは声を上げておかないといけないと思いました。
東京DLや埼玉県上尾の「ワクチン・検査パッケージ」の技術実証は、今回の政権の政策転換がどの程度のものかを評価する一つの指標になると思います。この動きを見る限り、過剰に期待しない方がよさそうです。
ワクチン未接種者に対する差別を生まないためにはワクチンパスポートまたはワクチン未接種者に用意されるべき検査を追加費用なく選択的に取得できる政策が同時に実行される必要がありますので、ワクチンを望まない私たちは高精度な検査を技術的、物理的に簡易に行なえるように要望する方向で働きかけていきたいと考えています。
令和3年11月19日の新型コロナウィルス感染症対策本部資料には、ワクチン・検査パッケージ等の検査を令和4年3月末まで予約不要、無料とできるよう支援を行う(資料20/60ページ)と明記されました。
上尾市のワクチンパスポート・検査パッケージの技術実証
上尾市のワクチンパスポート・検査パッケージの技術実証ですが、検査については何も行なっておらず、ワクチン接種の有り無しで区画と対応を分けただけの実験でした。
埼玉県の産業労働政策課の担当に確認したところ、検査の実証は行なっていない。差別を受けたと感じたアンケート回答は技術実証参加者数2050人の6%程度あったとのことでした。店舗側では検査の手続きを行なっていないにも関わらず、75%が負担と感じたと回答してします。単純作業に思える証明書チェック、個人確認、区画分けの手続きが導入の際には事業者側の重荷(現場の従業員の無給の労働負荷)になってくると考えます。
国の方針にしたがって次は技術実証ではなく本格導入になるとのことで、これで技術実証は終了したことになっています。
東京ディズニーリゾートの技術実証
東京ディズニーリゾートは、政府による「ワクチン・検査パッケージ」の技術実証に対応したパークチケットを発売しているようです。これはひと言で言うとワクチンまたは検査証明がある人に対する割引入場のサービスです。ワクチン打った人にお徳感があるので、ワクチン推進になるでしょう。ワクチンを打ってない人は云われなく高いサービス利用料を支払わされており、あきらかに差別となっています。
埼玉スタジアムでの「ワクチン・検査パッケージ」対応など
埼玉スタジアムでの「ワクチン・検査パッケージ」対応では、試合当日、埼玉スタジアム場外広場の専用ブースにて、「ワクチン接種済証・ワクチン接種記録書」 または、「陰性証明(PCR検査)」が確認されています。証明ができない方への現地での陰性証明を行う検査は実施していません。スタジアムへの入場前の11:00~15:00の時間帯に、必ずスタジアム場外南北広場に設置の「ワクチン・検査パッケージ 確認ブース」へ立ち寄る必要があります。
感染拡大が一時的に収束している現状(2021年10月~11月)では、ワクチン・検査パッケージ確認ブースは全体の中の一部です。2021年10月のJリーグ・日本代表戦に関するワクチン・検査パッケージ導入試合の調査結果について「表1 調査実施試合・内容調査内容」に全体の観客数の中でワクチン・検査パッケージ席の人数やスタジアムの中での具体的配置が記されています(内閣官房は国立研究開発法人 産業技術総合研究所にワクチン・検査パッケージの導入に関わる調査研究を発注しています)。
レジャー施設がワクチン・検査パッケージに賛同する事情
「ワクチン・検査パッケージ」について、県内の大規模レジャー施設(東武動物公園)の事情を書いておきましょう(これは公式見解ではなく個人の見解です)。
遊園地が抱える一番頭の痛い問題は、感染拡大して緊急事態宣言が出てしまうと顧客が来なくなることです。ですので緊急事態宣言が出ても、ワクチン・検査パッケージで通常通り営業できるという政策転換は歓迎です。少しぐらい割引しても施設を強制的に閉鎖しなくてよければありがたい(その意味で、ディズニーに限らず政権の意向を尊重して協力する)という立場だと思います。東武動物公園の動きは、もちろん競合相手であるディズニーを手本にして、優位性を保つ営業戦略も考えると思います。
再び緊急事態宣言が出るような蔓延状況になった時に、顧客どうしでも密着・混雑の状態が物理的に避けられない東武動物公園のようなレジャー施設は、いつも行列や混雑をどのように解消するかに多くの労力を費やしてい(人員を裂いており、その変動が読めないことが最も大きいコスト負担とな)るので、手間のかかる検査を独自に行なうことはないでしょう。電車で来る人は電車に乗る前(電車代を払う前)に検査をする必要があるし、車で訪れる人は事前に途中の検査所に寄ってこられるわけです。したがって、ワクチン接種証明あるいは検査証明を持ってきてくれれば少し割引をする(東京DLの技術実証と同じ対応)となります。
STOPコロナ差別への援護射撃:人権侵害はダメ
STOPコロナ差別を突破口にすれば、少しだけ明るい未来(変化の兆候)も見受けられます。例えば、(ポピュリスト的な言動を個人的には信奉していないのですが)三浦瑠麗氏が「めざまし8(エイト)」で人権侵害発言して援護射撃してくれているような動きです。
STOPコロナ差別はワクチン打っている人も打っていない人も(マスクしたい人も、マスクしたくない人も)、すべての人の共通認識になる(T-sanが他県での条例化を知らせてくれた時に、これは”ど真ん中直球”であると直感したとおり)と思います。
STOPコロナ差別は憲法が定める基本的人権に則る主張である以上、だれも否定はできません。政権はワクチンパスポート一本の政策実行が不可能と悟ったので、ワクチン・検査パッケージへの政策転換せざるを得なかったわけです。
私たちの基本スタンスは「ワクチン・検査パッケージなんていう意味のない制度は要らない!」です。ただ政権は是が非でも推進の立場なので、ワクチン・検査パッケージが廃止されるときが自民党政権が吹っ飛ぶときとなります。参議院選挙までにそのような動きになるかどうかですが、可能性はあるでしょう。
水面下で繰り広げられる検査技術争奪戦
新型コロナウイルス感染症病原体検査について、検査がすべて保健所等行政を介して行われていた状況から変化し、検査キット等ができた現在では、医師の判断で検査を行う以外にも様々な状況での検査が想定されています。
十年以上も前からビルゲーツらがPCR検査に代わる検査技術を持つ企業を買いあさっていたので、その動きを見ていればワクチンからの(検査へ誘導していくお金儲けの)展開は簡単に予想できました。
CDCは年内にPCR検査からインフルエンザと新型コロナの両方を同時に検査できる技術を採用する方針で、Mologicの1ドル10分で結果が出る技術に白羽の矢が立っています。現在の検査技術の比較表を次に示しておきます。
新型感染症検査においては、新しいゲノム編集技術「CRISPR」を使い、短時間で実施でき、かつ、コストの安い新型コロナウイルス検査法が考案されています。最新のCRISPR技術について、Sherlock Biosciencesのキットが2021年1月にFDAに緊急許可されています。このSherlock Biosciencesのキットは実験室の仕様でしたがその後改良されています。別の検査法として6月2日medRxivに掲載された東京大学医科学研究所の臨床使用できる検査技術(CONAN法)も開発されています。共同のライセンス使用契約者として株式会社ニッポンジーンが製品化を進めているようです。
住民が自由に選択できる検査技術・製品を!
新型コロナウイルス感染症の診断のために抗原迅速キットを使用する場合(令和2年5月13日付けの厚労省ガイドライン)は次のフローにしたがっていました。感染疑いのある人が指定の医療機関にて受診して、医師の指示を受けて診断確定する流れです。
その後日本でも検査は多くの民間の検査所で受けられるようになっています。
ところで、内閣官房はモニタと称して無症状で検査を受ける人から検査費用300円を割り引いて情報収集することまでやっているんです。
政権は検査を無償にする方向で検討をしていますが、これまでの経緯からして手放しで放置したら外国の製薬会社が外圧でごり押しして高価な検査技術に税金が投入されてしまうでしょう。そのようなことがないよう、利用者が検査キットを選択できるように、利用者の監視の目が届くようにしてほしいと思います。
検査をどのような仕組みで運用し(身近な検査所を設置したり、誰がどのような条件で無償と判断したりするなど)、どの程度の精度が見込めるのかの検証などについて、広報されかつ透明性が確保されなければいけません。住民が(接種するワクチンや)受ける検査を(海外技術だけでなく国産技術を含む)多くの選択肢の中から自由意志で選択できる制度設計を求めましょう。
検査における個人情報保護の徹底と法制度化
新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止を目的として個人情報を取り扱う機会が増えていることを踏まえ、個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号、以下法とする)の関連する規定を見直すべきでしょう。特に感染症検査について、無症状者に無償で行なう展開であることから、これと並行しての法整備を急ぐ必要があります。
現状では個人情報取扱事業者は、保有する個人データについて、原則として、本人に通知等している利用目的とは異なる目的で利用し、又は、本人の同意なく第三者に提供することは禁じられています。しかしながら、法令に基づく場合(本法第16条第3項第1号、第23条第1項第1号)や、以下に該当する場合には、例外として、本人の同意を得ることなく、目的外利用や第三者への提供が許され、今般の新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に当たっては、これらの例外の適用も含めて対応することが可能となっています。これらについては、個人情報保護委員会が扱っていますが、検体検査情報が勝手に流出して海外製薬企業のデータベースに組み入れられるようなことがないように、法制度化を働きかけていかないといけないでしょう。