血の弾圧が秒読みの香港

2019/08/25夜、実弾発砲の一部始終

 2019/08/25夜、香港のセン湾地区で警察がデモ隊に対面した。この時、警察官1人がデモ隊を威嚇するために空に向けて発砲したと報じられている。カメラマンの林亦非氏が、暴動鎮圧用の武装をした警察官が道路の真ん中で、丸腰の男性に銃口を向けている瞬間を写している。男性は片手に傘を握り、両手を広げて立っている。一部始終は動画でも公開されている(写真クリックで移動)。香港フリー・プレスによると、約12週間前に始まった一連のデモで実弾が発砲されたのはこれが初めてと報じられている。

 香港警察は、銃を抜いた警官たちの行動は正当だと擁護している。余铠均警視正は08/26に行った記者会見で次のように語っている。「6人の警察官が銃を抜いたが、それは自分の命が危険にさらされていたからだ。彼らは自分や、その場にいたほかの警察官や市民を守るために銃を抜いた。1人の警察官が空に向けて発砲したが、弾は誰にもあたっていない。」タンクトップ姿の男性に銃口を向けた警察官が男性を蹴ったことについて、「当然の対応だった」と述べている。報道各社が多くの写真や動画を公開しているので、この見解が的を得ているのか、全世界の人々が確認すればよいだろう。

 香港の事態は1989/06/04に起こった天安門事件に肉薄してきた。

丸腰の男性に銃口を向ける警察官 NewYork Times紙カメラマン林亦非氏撮影

Hong Kong protests turn violent as police fire live ammunition by Fox Business 2019/08/26 に公開

血の弾圧は意図的に仕組まれておこる

 正義を掲げる警察・軍隊がどのようにして同胞を弾圧・虐殺してしまうのか。30年前の真実もよく確認しておこう(2019/04/30ブログ、天安門事件の動画2つ☞)。中国政法大学・元講師 呉仁華さんは次のように語っている。「軍人は6月3日夜、天安門広場に入り、市民に発砲し殺しました。当局は彼らを臨時の駐屯地に隔離し、民衆や学生と接触させず、真相を知らせませんでした。当局は吹聴しました。『多くの戒厳部隊の軍人が、暴徒に拉致され殺されたうえ、武器が奪われて、暴動が起こった』と、軍人は反革命暴動が起こったと思い込んでいたのです。」天安門事件を目撃した呉仁華さんは著書、「六四事件における戒厳部隊」で、戒厳部隊が北京に入ってきたルートや北京での行動、虐殺の起きた夜の彼らの任務について、詳細に記している。

 国営メディア、新華社通信の首席記者でラジオテレビ部の副部長だった謝文清さんは、天安門事件の残虐な弾圧の模様を目にした。謝さんは「死心篇」という文章の中で、「燃やされた装甲車が整然と並んでおり、車間距離は均等で、車両はすべて東を向いていて、軍事パレードのようだったと述べ、軍事記者の体験から、ひと目で当局の仕組んだ陰謀だと分かった。しかも、それらの装甲車は旧型の装備であり、恐らく市民に変装した軍人が燃やし、『暴徒』の仕業に見せかけたのだろう。」と指摘している。

 血の弾圧は意図的に仕組まれておこるのだ。

1989年天安門事件、戦車の前に立つ1人の男 by BBC News Japan 2019/06/02 に公開

天安門事件 弾圧をした軍人が涙の告白|中国情報|六四事件|1989 by NTDTVJP 2014/05/31 に公開

破壊行為の犯人の「首」に賞金

 デモ鎮圧のためにはあらゆる手段が駆使される。その一つが賞金目当てに情報を提供させ、市民の自制を促し、結束している市民を分断しようとする試みである。反政府デモで実力行使を行った人物を特定するために高額の報奨金を提供する「803.hk」というサイトがオープンしている。活動家が香港の港に中国の国旗を投げ捨てた8月3日の事件にちなんで、名付けられた。報奨金の最高額は100万香港ドル(12万7500ドル)で、中国の国旗が引き裂かれて海に投げ捨てられた事件と、中国の出先機関である中央政府駐香港連絡弁公室で中国政府の紋章が黒の塗料で汚された事件の実行犯が指名手配されている。

 このサイトの背後にいるのが何者か、香港や北京の政府とつながりがあるのかどうかは明らかでない。サイトの説明によると、「香港ができるだけ早く平和に戻ることを願うさまざまな職業、地位の人々」によって運営されているという。香港市民が自由を求めるのは当然の権利であるが、公共の施設を破壊したり、国旗や紋章を汚したりする行為は香港を真に愛する行為とは言えない。このような限度を超えた実力行使に対しては、香港市民の意見が分かれるところである。

↓ サイトへのリンクは

弾圧を止めさせる方法:あなたが何が正しいかを見極めて行動すること

 自由を求める香港の市民も、警察官も軍人も、北京政府の指導者も、自ら信じる信念に基づいて自ら正しいと考えて行動している。一人ひとりの立場、価値基準、正義は多様であり、それらはしばしば相反するために衝突が生じてしまう。お互いが相手の立場を理解して、主張の縺れを紐解けば血の弾圧を止めることができるはずだ。その意味で実質的には習近平と香港市民とが直接対話をすることが不可欠である(トランプ大統領も言う通り)。ところが北京政府は今のところ対話をする考えがない。北京政府に考えを改めさせるために、世界の世論の力(あなたが何が正しいかを見極めて行動する力)が必要なのだと思う。

 最後に北京政府がどうしても譲れない一線が、2019/09/11-12に香港で開催される一帯一路サミットと中国国慶節2019/10/01の建国70周年式典の成功である。北京政府がメンツを賭けて意図的な工作を決行するとすれば、今週末がタイムリミットと見られる。

アジア連帯で「香港頑張れ!」中国の弾圧と侵略を許さない! by SakuraSoTV 2019/08/30 に公開

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