Chernobyl Heart、Fukushima 50のメッセージ

これは、Maryann DeLeo監督が2003年に制作したドキュメンタリ映画「Chernobyl Heart」のエンディングで流れる大切なメッセージである。メルトダウンした原子炉から放出され続けている放射能による汚染は、Chernobylでも、Fukushimaでも成す術なく放置されている。放射能で汚染されている土地で生活し、汚染されている食品を糧とする私たちの体は、低線量の被爆をし続け、甲状腺ガンだけではなく心疾患や免疫不全が密かに進行している。明日にも、私たちの身に病が迫っていることは紛れもない真実である(これまで綴ってきた、放射能被爆の真実《レビュー》参照)。

原子力市民委員会は「海洋放出を強行するのではなく、十分な検証を尽くすまで恒久的なタンクの中に保管することを提案」したが、これを無視して、経済産業省の汚染水処理対策委員会では海洋放出を強行する方針を決めた。私たち日本人は、犯した過ちを反省もせず、責任もとらず、技術的に汚染を少なくする選択枝があるにも関わらず、汚染水を世界に垂れ流がそうとする政府を放置してよいのか。これは日本が技術立国として存立する礎を放棄する意思表示であり、日本人として恥ずべき行為である。

2019/09/19には、福島第一原発事故の刑事裁判の判決が下り、2020/03/06には福島第一原発の中で何が起きていたのかの映画『Fukushima 50』が公開された。原発内に残り、事故の収拾にあたった地元福島出身の作業員たちは海外メディアからFukushima 50と呼ばれた。福島第一原発の中で本当は何が起きていたのか?真実は何か?東日本壊滅の危機が近づく中、苦渋の決断を迫られる彼らが胸の内に秘めた思いとは?などについて、この映画は鮮明な記録を残している。今日は東日本大震災(2011/03/11)のあの日から9年目、福島第一原発で起きた日本の危機的状況を思い起こしておきたい。

幸か不幸か、新型コロナウィルスの脅威が私たちに立ち止まって考える機会を与えている。この機会にChernobyl HeartとFukushima 50をゆっくり観ることができた。Chernobyl Heartからのメッセージを引き継いで、Fukushima 50が私たちに伝えていることは、人がいき続けることは、おごることなく分をわきまえて生きていくことであると確認した。心身ともに退化することなく生き続けたい。

ビデオギャラリー「放射能被爆の真実《レビュー》」更新(2020/03/12)

2011/12/28にNHKが放送した真相ファイル「低線量被ばく・揺らぐ国際基準」は世界の原発事故による放射能が食品による内部被曝により私たちの健康を害してきた記録を残している(番組に対するさまざまな議論あり)。当時NHKでさえ報道した低線量被曝の番組は、全く放送されなくなっている。

脱原発の世論を形成したいとの思いから、弁護士であり映画監督である河合弘之氏が制作した映画「日本と原発」の続編「日本と原発 4年後」(2015/10/10公開)の改訂版全編がYouTubeで公開されている。【東電退避問題と国家壊滅危機(00:19:45)】【福島事故の最悪シナリオ(00:30:10)】の部分は映画Fukushima 50の補助線となるし、【相関図で見る原子力ムラ(00:44:11)】は教科書に書かれない社会常識として頭に入れておきたい。

世界的にはやはり英BBCドキュメンタリ映像を確認しておきたい。2012/02/23には実際に福島第一原発事故の現場にいた者たちが事故を語る映像が「メルトダウンの内側」として制作・放映された。福島の事故と同じ年の2011/07/22に、チェルノブイリ原発事故の真相について事故後すぐに現地入りした科学者、ワレリー・レガソフ氏が自ら見聞きした体験をまとめた回想録を元に描き、ドキュメンタリ「Chernobyl Nuclear Disaster」として制作・放送された。BBCのこの2つのドキュメンタリは、事故の世界的な認識のレベルを知るという意味で役立つだけでなく、テーマを絞って深堀りした映画であるChernobyl Heart、Fukushima 50の理解を助けてくれる。

東日本大震災9年を振り返る方が、リンク切れなどでたどれなくなっていた貴重な映像を復活してくれた。この機会にビデオギャラリー「放射能被爆の真実」を更新しておきたい。

2020/03/11 新型肺炎の流行とメルトダウン事故のつながり

時間的にも地理的にも世界はつながっている。生物も含めて遺伝子的にもみながつながっている。メルトダウンした原子炉から漏れ出している放射能には、人間は成す術がない。年月を重ねるにつれて、チェルノブイリ周辺では住民の健康被害が増大している。福島の子供たちに実施された甲状腺検査でも、穿刺細胞診で悪性ないし悪性疑いと診断された患者が、222人(2020/02/20)となり、そのうち約170人が手術を実施した。ところが前述したとおり、日本政府は汚染水を海洋放出して放射能を世界に拡散しようとしている。Chernobyl Heartが警告している通り、低線量被爆により世界の人たちの体で密かに進行する心疾患、免疫不全などは、新型肺炎の感染による重篤患者の比率を高めることになるだろう。

福島の真実(甲状腺癌の人数など)、復興五輪の真相を報道し続けるOurPlanet-TV


新型肺炎の流行・感染は世界の経済に大きな影響を及ぼしており、経済の失速は人の命に直結する事態を招くことになることが2020/03/11に語られた。(例えば、「新型コロナウイルスと3月11日 あの日の福島から学ぶべきこと」石戸 諭、HUFFPOST)

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