韓国のゆくえ

6年前にわかっていた韓国の従中離米

韓国が2019/08/22に、日韓GSOMIAの破棄を決定した。メインストリームメディアでもSNSでも大騒ぎしているが、その核心をとらえている記事・解説は少ない。実のところ、韓国の従中離米の動きは6年前に明らかになっており、既に藤井厳喜氏らが冷静に分析していた。

韓国経済については、その後もいくつかの財閥企業に牽引されて「瀕死」は顕在化していない。半導体・電子市場における韓国の国際的地位はむしろ、この数年間上昇してきたように見える(どちらかと言えば日本の企業の方が劣勢で、韓国企業との半導体・電子市場での関係については先日のブログでも懸念を記した)。数年前にこの動画を見たときは半信半疑だったが、韓国による日韓GSOMIAの破棄の通告を目の当たりにして、藤井厳喜氏の分析が的を得ていることがわかった。

この後、韓国の産業がサバイバルする一方で日本の産業が国際競争力を喪失することになるのか、あるいは中国企業が漁夫の利を得て勃興する一方で日韓の企業が市場での地位を失墜することになるのか、推移を注意深く見守りたい。

一般にGSOMIAとは、軍事情報に関する包括的保全協定(General Security of Military Information Agreement)で、同盟など親しい関係にある2国あるいは複数国間で秘密軍事情報を提供し合う際、第三国への漏洩を防ぐために結ぶ協定である。

今般問題となっている日韓GSOMIAは2016/11/23に署名されて発効、その後1年毎に自動更新(2017年、2018年に更新)されてきた。この協定破棄には更新3ヶ月前の通告が必要のため、2019/08/22に韓国が協定破棄を決定して通告してきたものである。これにより、2019/11/23の午前0時に効力を失う予定となっている。

「韓国経済の没落と中韓軍事同盟の時代」by 藤井厳喜、2013/07/24 に公開

藤井氏の分析の要旨は以下の通り:
韓国経済は現在、急速に没落しつつあります。韓国経済の成長のエンジンであったサムスン電子の株すら続落しています。全く出口が見えないのが現在の韓国経済の実情です。こういった経済状況の中で、朴槿惠政権は、大きくアメリカ離れをし、チャイナに急接近しています。
一言で言えば、「従中離米」の外交政策です。特に軍事面においては、中韓軍事同盟と言ってもよいような、二国間軍事協力が成立しつつあります。中韓軍事同盟の基軸の1つは言うまでもなく「反日」です。現在、優柔不断な米オバマ政権は、この韓国の従中離米の急旋回に戸惑っているように見受けられます。しかし、やがてアメリカは韓国を見放して、その防衛ラインを対馬海峡に引き直さざるを得ないでしょう。思ってみれば、韓国は2000年間に渡り、中華帝国の属国的な地位に甘んじてきました。韓国は遂にその伝統的なポジションに復帰しつつあるのでしょう。
日本はその事を十分に弁えた上で、対韓外交を再構築しなければなりません。かつてのような北朝鮮を敵としての、日米韓の3国安全保障提携は、最早、原理的に不可能なのです。日本がやろうと言っても韓国は既に反日を基軸として中韓同盟の方向に大きく舵を切ってしまいました。最早、日米韓安保提携を行なう現実的な条件は一切、失われてしまったと言えるでしょう。以上のような動向は、6月27日、28日の中韓首脳会談を中心とする一連の両国間の外交関係にハッキリと現れています。やがてアメリカも明確に認識せざるを得ないでしょう。

韓国向け輸出管理の運用見直しが安全保障の重大事へと波及

応募工や慰安婦の人権、国際取引の自由、国の安全保障など、全く別の次元の話を混同してボタンを掛け違っているところに問題があり、それぞれの価値を独立に極大化する話し合いができない両国の当事者の無能が問題の根源であることを再度指摘しておく。世耕経済産業相が韓国向け輸出管理の運用見直しについて説明する際に、韓国の応募工訴訟の経緯を関連付けて説明した(2019/07/03)。BBCインタビュー(2019/08/22)でも康京和外相は異なる次元の問題を関連付けて説明している。それぞれの当事者が意図的に、異なる問題を複雑に絡めてしまったため、縺れた糸を解きほぐすことが困難になってしまった。

2019年1月から8月にかけて、韓国向け輸出管理の運用見直しおよびホワイト国除外の手続き変更を推奨して進めてきた裏方の人物が青山繁晴氏である。議員として行政官と十分議論を重ねた後に、首相をはじめとする政府関係者にこれまでの韓国に対する政策を大きく転換させる役割を果たしている。安全保障の専門家である青山氏は、日韓GSOMIAが破棄さても日本はほとんど問題はないと解説している。

しかし、直近の日本の経済や安全保障に支障は生じないとしても、韓国が北朝鮮と共に従中離米することの影響は計り知れない。朝鮮半島が緩衝地帯ではなくなり、現在の38度線が対馬列島にまで迫ってくることを考えると、今生じている日韓の亀裂は単に経済・産業の未来だけではなく、日本の安全保障の前提を大きく変える重大な事態であるように思える。

BBC HARDtalk with Kang Kyung-wha 2019/08/22 に放送

インタビューのフルテキスト音声が確認できます。

「韓国 GSOMIA破棄決定などについて」 by 青山繁晴 2019/08/26 に公開

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。