官僚国家の実態-Ghosn逃亡で露出した日本の正体

元日産自動車会長のカルロス・ゴーン被告が音楽機材用の箱に入って2019/12/30にレバノンに逃亡し、年末年始にまたがって大騒ぎになっている。個人的には不正な手段を用いて不法に出国したゴーン被告の行動を正しいとは考えないが、個人の力で日本の国家権力に抗うゴーン被告の主張には耳を傾けたい所もある。それは、日産自動車という民間企業に、経済産業省出身の社外取締役である豊田正和氏が就任していたり、経済産業省の官僚や政府関係者が経営に干渉するのは変だと考えるからである。

逃亡直後にゴーン被告は海外メディアに「日本政府要人の実名を出して、自分を陥れる陰謀だったと話す」と予告していた。これに対して、日本外務省が大久保駐レバノン大使を通じて、レバノンのアウン大統領にプレッシャーを掛け、記者会見でゴーン被告が実名を出さないよう要請した。これを受けてレバノン政府はゴーン被告に対して「日本政府要人の実名を出すな、もし出すなら会見はやらせない」と圧力をかけたという経緯となっている。結果として、ゴーン被告は2020/01/08にレバノンの首都ベイルートで開いた記者会見で、同国政府に迷惑がかかるので実名は挙げないとしながらも、逮捕は日本政府関係者も関わった陰謀だと訴えた(参考になる報道例:「私は嵌められた」ゴーン、ベイルートで無罪を叫ぶ)。

日本は民主主義国家ではない。 日本は「世界でもっとも成功した過去を持つ社会主義国家」と言える。日本国政府の実態は、中央省庁がそれぞれの分野を縦割りに支配する構造となっている。国家の正体は、これら縦割りの官僚機構とその構成員(官僚)たちである(この構造は以前ブログ「石井紘基がやり残した改革を貫徹せよ」でも触れた)。

現内閣・閣僚に限らず歴代内閣・閣僚のほとんどは、官僚が決めた政策を代弁する程度の仕事しかしていない。各省庁が自分の取り分を財務省に要求し、それを財務省が取りまとめたものが予算案となっている。官僚たちは特別会計と一般会計との二重帳簿で覆い隠して詳細を明らかにしない。官僚たちは、民間企業の役員に天下りする形で、多くの民間企業に口出ししてコントロールしている。日本経済の大部分は民間ではなく官が支配する社会主義経済であり、中国共産党が支配する国家となんら変わらない。

1990年以前は、事務処理能力に長けた官僚たちが政界と財界をうまく調整して国家を成長させてきたが、高度経済成長が終わり模範解答がない段階に達した国家の経済運営は成り立たなくなってしまった。官僚機構を主体とした国家の構造を建て直さない限り、日本に新たな発展はないと考える。

Ghosn逃亡の一件に関して、橋下さんが日中の刑事司法制度という観点から面白い議論をしているので参考に引用しておく。☞橋下徹「ゴーン氏への日本の反論はアンフェア」
以下、ツイッターでの議論参照。

1980年代後半、私自身の就活の中で、日立、東芝、三菱、NEC、松下、ソニーの半導体事業および研究所を一通り回る機会があった。第一線の現場の経営者や腕利きの技術者の方たちと自身のワークライフを賭けて真剣に議論した際に、半導体集積回路では日立が、光学素子ではNECとソニーの技術が世界に秀でて独創していたことを目の当たりに確認した。ところが遺憾ながら、当時世界から傑出した電子工学専攻の技術者をリクルートした日本のエレクトロニクス企業が、この30年で世界競争力を失ってしまった。同僚技術者の優秀さをよく知っている私自身は、産業没落の最大の理由は日本の官僚機構の弊害であると確信している。1990年までは輝きを放っていたDRAMメモリ製造企業のエルピーダメモリが政府主導で経営を失敗した話は以前にもブログで触れた。

技術者としての実務経験があり研究者・教育者として活躍している武田先生が、家電業界が衰退した理由も経済産業省の環境・リサイクル政策が原因と指摘しているので、事例として引用しておく。

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