休校の子供たちに見て欲しい映画

日本人というのはどのような人か、それは身に降りかかる現実を受けとめ、自分自身を愛し、周りの人々も愛して生きるすずのような人だと思う。すずは顔も知らない男の家に嫁ぐように突然父親から言われて従い、夜明け暗いうちから起床して、嫁として家事を切り盛りし、出戻りの小姑からイジメを受けても相手を思いやって接し、小さな幸せを見つけながら新境地で生活する。すずには絵の才能があったが、戦争が彼女の右手を奪ってしまう。それでも彼女は残った左手で生活し、再び絵を描こうと立ち向かう。すずは身近にいる私たちの父母や祖父母たちにそっくりである。

「この世界の片隅に」は原爆投下に至る広島を舞台に市井の人びとの日常を描いたアニメ映画である。日本人のリアルと重なるすずの生き方と共に、戦争の愚かさ悲しさ、そしてまた一から立ち直って前向きに生きていこうとする姿勢の大切さを、このアニメ映画を通して是非とも日本の子供たちに観て欲しいと思う。空襲で使われた爆弾の種類から食糧難の中の献立まで、リアリティを追及して描いた日本アニメの真骨頂を、家族が共に味わうことで世代を超えての共感の輪が広がり絆が深まるだろう。

「この世界の片隅に」に人生の全てをかけたという片渕須直監督への独占インタビューがこちらにある。トップアニメータとなった片渕監督のアニメ制作にかける思いと彼自身の人生を、次世代の若い人たちが範にしてほしい。監督は大阪・枚方出身、その生い立ちから「この世界の片隅に」完成までに、乗り越えなければならなかった挫折がいくつもあったという。

「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」映画監督:片渕須直

2016年公開以来ロングヒットを続けるアニメ映画『この世界の片隅に』に約30分の新規シーンを追加し、主人公だけではない「さらにいくつもの人生」を描き出す「もう一つの物語」が現在も上映中である。

広島県の呉に嫁いだすず(のん)は、夫・周作(細谷佳正)とその家族に囲まれて、新たな生活を始める。昭和19年、戦況が悪化し、生活は困難を極めるが、すずは工夫を重ね日々の暮らしを紡いでいく。ある日、迷い込んだ遊郭でリン(岩井七世)と出会う。境遇は異なるが呉で初めて出会った同世代の女性に心通わせていくすず。しかしその中で、夫・周作とリンとのつながりを感じてしまう。昭和20年3月、軍港のあった呉は大規模な空襲に見舞われる。その日から空襲はたび重なり、すずも大切なものを失ってしまう。そして昭和20年の夏がやってくる。

公式ホームページには、すずさんの生きた時代(年表)など、この映画をより味わえる、とっておきの情報が散りばめられている。

「この世界の片隅に 」原作者:こうの史代

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