五輪中止を決断すべき4つの理由
《Ⅰ》命は五輪より尊い
日本人を含む多くの人命が新型肺炎に不本意に感染して失われる事態を回避するには、急遽2020東京五輪を中止することが、有効かつ最良の選択と考える。最も大切なことは、五輪で日本を訪れる世界中のトップアスリートや観光客の方々、そして私たち日本人の命が危険に曝されるリスクを避けることである。これまで日本政府は新型肺炎の日本での感染に関して有効な措置を実施できなかった。結果として既に初めての死者が日本でも発生しており、実際に日本に既に蔓延している新型肺炎の状況からして、7月までの終息は不可能である。
ようやく安倍政権は、五輪の中止という最悪のシナリオだけは避けたいと真剣に対応しはじめたが、とき既に遅しとの感が否めない。メインストリームメディアでも、五輪中止という選択を報じるようになっている。例えば、ニューズウィークは2020/02/14に、「新型コロナウイルス、初の死者で「信認低下」懸念 東京五輪中止の悪夢も」というヘッドラインで、最悪のシナリオを報道している。
ウイルス呼吸器感染症の専門家、根路銘国昭氏は「コロナウイルス感染拡大は3月までに終結する」と判断しているが、中国湖北省武漢市の医師(李文亮氏:冒頭の慰霊画像)らがなぜ死亡にまで至ったのかなど深層が語られていない。
横浜港沖に停泊したままのダイヤモンド・プリンセス号での防疫対策(2020/02/13)
その後、ダイヤモンド・プリンセス号に入った専門家の発信を整理した(ダイヤモンド・プリンセス号を救え!2020/02/19)。岩手医科大学の櫻井氏がなぜ「私たちを助けて下さい」と言っていたか、ようやく腑に落ちた。
《Ⅱ》「嘘ついて誘致した五輪」という瑕疵の重さ
「嘘ついて誘致した五輪」という瑕疵は非常に重い。一つ目の嘘は、福島第一原子力発電所事故に伴う放射能汚染について、「状況はコントロールされている」と言い切った。しかし、開幕まで半年を切った今も、福島の現場は汚染水を制御できていない。安倍首相が2013年9月に行なった東京五輪招致演説をよくご覧あれ。
二つ目は、「この時期の天候は晴れる日が多く、且つ温暖であるため、アスリートが最高の状態でパフォーマンスを発揮できる理想的な気候である{p.14に記載}」と嘘をついたことである。東京五輪招致委員会は、7月から8月の間に開催する日程でないと東京にオリンピックは呼べないと認識したうえでオリンピック招致を進め、しかも、この時期の東京が野外で激しい運動ができるような気候でないことを隠して招致を強引に押し進めたのである。これに気付いた国際オリンピック委員会(IOC)が、2020年東京五輪のマラソンと競歩について、コースを東京から札幌に移すことを決定した経緯は周知の通りである。
三つ目の嘘は、東京五輪の費用が誘致当初には7000億円で実施できる「コンパクト・オリンピック」と語られたにも関わらず、実際には3兆円へ増大していることである。東京都民も国民も、皆が「仕方がない」という空気感で見過ごしているが、普通の企業ならこの点だけを取り上げても事業そのものの中止を免れない深刻な話である。誘致しやすいように予算を低めに算定してアピールしたことは紛れも無い事実であり、誘致担当者、安倍首相、そして準備を実質的に妨害して無駄な予算を浪費してきた小池都知事の責任を追及すべきである。
「福島はオリンピックどごでねぇ」原発事故被害者団体連絡会、脱原発福島ネットワーク
スポーツを道具として使い、世界のアスリートをだますような「復興五輪」を認めるわけにはいきません、いわき市議:佐藤かずよし氏(2020/02/13)
招致で「アスリートに理想的な気候」と大嘘
東京五輪マラソンの札幌変更をIOCから提案されても東京開催を言い張る人々 招致でも「アスリートに理想的な気候」と大嘘、LITE-RA(2019/10/17)
東京五輪費用の嘘:当初7000億円から3兆円へ
東京五輪の費用、当初7000億から3兆円へ、予算も気候も偽って誘致した責任は誰が取るのか、らぽーる・マガジン(2018/10/15)
《Ⅲ》稚拙な大会準備・運営
東京2020組織委員会や東京都が行なっているボランティア研修内容を見る限り、果たしてこれで大会運営ができるのかと疑うほどにレベルが低い。競技会場や選手村で競技運営や観客のサポートをする「大会ボランティア:Field Cast」8万人、空港や会場の最寄り駅などで交通案内をする「都市ボランティア:City Cast」が3万人の応募があったが、本番で烏合の衆になってしまうのではと懸念している。
個人的にCity Castとしてボランティア参加する予定で、危機管理(例えばテロのような緊急時)の対応でボランティアがどのように行動すればよいかに関心があり、万全の準備を整えたいと考えている。しかしこれまでの研修では、それらについて具体的に触れられず、不安と落胆を覚えている。危機管理を意識しない大会運営はありえない。
表彰式でポケットに手突っ込んでいる小池都知事【東京マラソン2019】
《Ⅳ》負の遺産でなく、やり直しの英断を歴史に残すべき
上記以外にも誘致のための不明瞭な工作費、摸擬ロゴ、築地市場の豊洲への移転の遅れ、暑さ対策に実施したマラソンコース遮熱性舗装費用300億円の回収不能などなど、数え切れない負の遺産が既に積みあがっている。そして歴史を振り返れば、オリンピックが国家にとってお金儲けになった例はない。一部の人に短期的な収入をもたらすことはあっても国全体を潤すことにはならず、むしろ弊害を及ぼす結果となる。この時点で、私たちは経済偏重・利権野放しの危うさに気づき、最初からやり直しをする英断を歴史に残すべきと考える。
東京五輪で積み上がる負の遺産
五輪3施設見直しも、難題が続出、週刊朝日(2016/10/21)
たけし「東京五輪やめちまえ!」、デイリー(2019/11/02)
ジム・ロジャーズ「日本は東京五輪で衰退する」、東洋経済(2019/11/10)
久米宏が高まる東京五輪同調圧力に徹底抗戦!「大反対の気持ちは変わらない」 、LITE-RA(2020/01/19)