自治会は必要か(1)

令和元年度に内閣府が行なった社会意識に関する世論調査に関連するアンケートデータがあり参考になる。「望ましい地域での付き合いの程度」を尋ねた問いでは、「地域の行事等に参加したり困ったときに助け合う」と答えた人の割合が35.9%、「地域の行事や会合に参加する程度の付き合い」が29.4%であり、6割を超える人が何らかの形で住民同士、困った時に助け合いたいというニーズを持つ。一方、「現在の地域での付き合いの程度」については、「付き合っている」と答えた人の割合が65.4%、「付き合っていない」と答えた人の割合が34.3%となっており、地域コミュニティのニーズと現状の数字がほぼ一致している。

年齢別に地域の付き合いの度合いを比較してみると、年齢が高くなるほど地域の付き合いの現状およびニーズが高くなっている。特に、30歳以上の回答者と30歳未満の回答者の間に数字に大きな段差があり、この結果は子育て世代が地域での付き合いの必要性を認識していることを示唆している。また、高齢になるほど地域でのより強い付き合いが増す現状がある。

このデータから、地域コミュニティの中心的な役割を担う自治会の活動を肯定する理由としては、「子供たちの成長」と「高齢者の生活」の2つが出発点になると考えられる。

ところが現実には、「自治会活動の停滞」、「自治会維持管理費の負担感の増加」、「自治会への未加入世帯の増加」、「加入者と未加入者間の不公平感の増幅」など、自治会の運営に関わる各種の課題が全国的に表面化している。

自治会活動が停滞するわけ

地方だけではなく都心近郊の住宅地であっても、65歳以上の高齢者が人口に占める比率は4人に1人を超えて3人に1人に近づきつつあり、少子化により年少人口が減少していく傾向が共通している。

定年(年金支給開始年齢)が65歳にまで延長されたことで、これまで自治会活動の中心的役割を担っていた定年直後の人たちが活動を行なえなくなっている。また、共働き世帯が増えたことで家庭を預かる主婦(夫)層が少なくなり、時間をやり繰りしての自治会の活動を困難にしている。さらに各家庭での老齢者の介護負担が、構成員の労力と時間を束縛して余裕を失わせている。各人が自助に追われ、共助の原動力が枯渇する各世帯の事情が自治会活動を停滞させる原因となっている。

自ら活動ができず、かつ会自体の活動が低迷してくれば、自治会維持管理費などの負担感は増加し、強制ではない自治会への加入意欲が失われる。このような中で、加入者同士あるいは加入者と未加入者間の不公平感も増幅していくことになる。そして、一年以上続いている新型コロナ禍が自治会活動の停滞に追い討ちをかけている。

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